山中に墜落したラジコン飛行機の発見回収回顧録

空物ラジコン

ラジコン飛行機を山中に墜落させて失ってから2か月、もう回収することはあきらめていた頃でしたが、とある人が同じ場所で自身のラジコン飛行機を喪失し、山中を捜索していたときに、偶然通りかかった場所から白いラジコン飛行機らしいものが木に引っかかっているのを見たらしい、という話を聞きました。

それを一緒に聞いて仲間は「それは絶対にお前のラジコン飛行機EDGE540だ、一緒に探しに行こう!」と言ってくれたのです。

墜落の瞬間は突然やってくる
飛行中に全ての舵やエンジンコントロールのサーボが突然動かなくなり、何も操作できず、完全に機体はノーコンになり、スピンしたまま飛行場から外れた深い谷へゆっくりと吸い込まれていきました。1機12万円以上と自信と信頼を失いました。

ついにEDGE540大捜索作戦を開始

当日は風が大変強く朝からあきらめモードだった事もあり、私もいつもなら、せっかく時間をさいて遊びにきている仲間を危険な山中の機体捜索に付き合わせる事に抵抗があります。

しかし強風のためにどうせこのまま飛ばさずに帰るであろう事、そして何より発見される事を望んでくれている仲間の気持ちに甘えて同行してもらうことをお願いしたのです。

そして3人で道なき山中への捜索準備に取り掛かりました。

新装備GPS携帯を投入

この時仲間の一人はauのGPS携帯を所持しており、「これに目撃地点の方向をインプットしておけば、目的地に的確に進んでいける優れた機能である」と、力説する姿を頼もしく思いました。

たしかに前回一人で山中をさまよっていた時、入山してすぐに自身の位置が分からなくなり、墜落していく機体の方向を確認したにもかかわらず、どこが目的の方向なのかさえ判断できなくなり、奥へ進んでいくことに危険を感じ捜索を断念しましたので、本当に仲間が言うような機能が作用するならば、かなり安全が担保されるであろうと考えました。

しかし、以前の無線カメラの一件を思い出し、今回は一歩間違えれば命がけになる行為をネタに、GPS機能の威力を試せる機会がついに訪れたことに意気揚々ワクワクしているのではないかと一抹の不安がよぎりました。

が、私も、金と時間を大いにかけ、愛着を持って飛ばしていたエッジ540が目撃されたとあっては、すでにあきらめていたつもりであっても是が非でも回収したい、たとえ残骸となっていても自分の手で処分してやりたい気持ちが再燃し、仲間の新型GPS携帯に賭けることにしたのです。

谷への下山ルートを探し、機体を発見

まずは前回私が辿ったルートを同行メンバーに案内し、そこからは目撃地点が見えず、さらに山を下っていく必要があることを確認し、3人で手分けしながら下山ルートを探しました。

しばらくしてなんとか降りていけそうな場所を見つけたのですが、そこはほぼ垂直な崖であり、しかも岩盤だったため、上から大きな岩が転げ落ちてくる非常に危険なルートだったのです。

しかし方向はGPSが指し示す方向と一致していた為、用意したロープとわずかな足場を頼りに、危険を承知で慎重に崖を降りていきました。

しばらく降りていくとはるか眼下に白い物体が見えてきました。

もしや!と思い、ハッキリと確認出来る場所までいくと、機首にフェニックスのマーク、それはまさしく私のエッジ540でした!ようやく2ヶ月以上経過して私は自分の機体を発見したのです。

遠目からですので機体の破損状況は詳細には確認出来ませんが、木に引っかかっているようで、大きく折れたり他人にメカを外されている様子はありません。

「あいつはあんなところで俺が探しに来るのを雨風に晒されながら待っていたんだ!」と感激しました。

フェニックスは必ず復活する!といって仲間共々フェニックスのステッカーを機体に貼り付けていましたが、墜落し喪失して以来、私は当然、仲間も「なにがフェニックスだ、復活しないじゃないか」と思っていたことでしょう。

しかし!私のフェニックスが復活するなら自分の機体も必ず復活する。

そう信じたい、だから必ず発見回収したいと仲間も思ってくれたに違いありません。

そして今、眼下にそのフェニックスが燦然と輝いて見えます。

本当は色あせてしまっているでしょうが、少なくとも私には輝いて見えたのです。

発見した位置をGPS携帯に記録して別ルートからアプローチ

もう少し無理をしてでもそのまま崖を降りて状況を確認、回収したかったのですが、仮にエッジ540が引っかかっている場所まで辿りつけても、片手に機体を持って同じルートを戻ることは確実に不可能でした。

そこで、仲間のGPS携帯に現在地を入力してもらい、一旦引き返し別ルートを探す事に決めましたが、降りていくときは夢中でしたが、落石の危険がある険しい崖を上っていくのは非常に困難であり、激しく体力を消耗しました。

ようやく少し開けた傾斜の緩い場所まで戻ったときにはヘロヘロになり、風が冷たく寒い日でしたが、汗だくになってしまい、やはりとてもじゃないけど一人では危険すぎることを痛感しました。

しばらく休憩した後、迂回ルートの検討をしました。

目撃者の話では山の谷あいに小さな沢があり、その沢から見上げると機体が見えたらしいので、まずはその沢まで傾斜の緩い部分を選びながら降りていくことにしました。

目撃者は以前から沢の存在を知っており、飛行場から離れた場所からアプローチしたらしいのですが、仲間のGPS携帯がかなり有効なことが分かりましたので、回収した機体を持ち帰ることを考え、最短で安全なルートを探しても迷うことはないであろう事を前提に、沢を探して山を降りていき、何度か道無き道を行ったり来たりを繰り返し、休憩しながら私たちはようやく沢を発見しました。歩いたルートはGPS携帯に記録されていますので、戻る道に迷うことはありません。

その沢にそってしばらく歩き、GPSが指し示す上空に先ほど見た私のエッジ540が当然のようにありました。(GPS携帯は本当にスゴイ威力です)

今度は下から機体の元へ行かなければなりませんが、高い木に引っかかっていると登っていかなければならず滑落の危険もあるため、低い木であるよう願いながら近づいていきました。

足下が怪しくなっている私にしびれを切らし、見かけによらず身軽な仲間が先導して進んでいき、いち早くエッジ540に近づき状況を報告してくれました。

「簡単に回収できる!」

ついに愛機と2か月ぶりの再開

それを聞いて疲れも一気に吹き飛び、急いで私も現場に向かい、見てみれば丁度足場から手を伸ばせば取れる位置に枝葉を茂らせる木にエッジ540はありました。

50m以上の高度から墜落したとは信じがたい、全くどこも破損していない自分のエッジ540を見たときは「これは奇跡だ!」と叫んでしまいました。

誰かがそっと置いてくれたとしか思えませんでした。

今すぐにでも飛びそうでした。

一緒に探してくれた仲間も大変驚いていましたし、まさしく必死の思いでようやく機体を発見回収出来たことを一緒に喜んでくれました。

もう少し見つけやすく取りやすい場所なら他人が持ち去ったでしょうし、硬い場所なら木っ端微塵になっていたでしょう。

なにか大きな力が働き偶然が重なりエッジ540はそこで私が来るのを待っていたのです。

被服の薄いフィルムすら破れていない機体に信じられない思いを何度も巡らせつつ、しかし同時に「絶対にもう一度俺は飛ぶ!」という妖気すら発し、なんと執念深いエッジ540か、とただならぬ気配も感じました。

壊さず持ち帰ることが一番大変

持ってきた工具を使い、その場で機体からキャノピーと主翼を外して3人で分担しながら搬送し戻ることにしたのですが、本当の問題はここから、来るときは両手で自身をささえ、体さえ通る隙間を見つけて降りてきましたが、戻るときは片手で機体を持ち、片手だけで自分を支え、急な斜面を登っていかなければなりません。

大きなラジコン飛行機が通る場所を探しながら進まなければなりませんし、足を滑らせば機体を壊します。

しかし、それよりも滑落して大怪我という危険すらありますので、くれぐれもアカンと思えばさっさと機体を手放して自身の安全を確保するよう仲間にお願いし、飛行場へと戻ることにしました。

さきほどの崖と同じく降りる時は半分滑り落ちながら来ましたが、登るときは一歩一歩確実に進まなければなりません。

どうしても両手が必要な斜面は3人で機体をリレーしながら上げていき、足元がふらつくほど疲労しながらも私たちは戻っていきました。

恐るべきは他人の機体を必死で持ち帰ろうとしてくれる仲間です。

私だったらあんなに一生懸命に他人の飛行機を探すことも、ましてや無傷で持ち帰ろうなどという無謀な真似は出来ません。

感謝しても感謝しきれない思いを胸に最後の急斜面をクリアーし、実に2ヶ月放置され、そして2時間近くの回収作業で、エッジ540は自分が飛び立った飛行場に、ギャラリーの驚嘆の声に迎えられながらついに戻ってきたのです。そう!フェニックスは復活したのです!