ラジコンに用いるグローエンジンには2サイクルエンジンと4サイクルエンジンがあります。
2サイクルエンジンはピストンでシリンダーの吸排気ポートを開閉する仕組みなのでメンテナンス個所はほとんどありませんが、4サイクルエンジンは実車のエンジンと同じくタペットクリアランスが規定値内になるよう、点検調整が不可欠です。
特に十分なパワーを必要とするスローアクロフライトにおいては、タペットクリアランスが少なくなる(タペットがしっかり押し下げられない)と、推力不足により、ホバリング系の演技がかなり難しくなったり、パワー低下を燃料を絞ることで補おうとして、オーバーヒートさせてしまったりすることもあります。
4サイクルエンジンユーザーは、日ごろからタペットクリアランスに注意が必要です。
SAITO56Fのタペット調整
F-AIRに載せているSAITO56F、最近ほとんど使うこともなく、長らく倉庫に保管していたので、たまには回しておくことにしました。
点検整備もしていなかったので、ロッカーアームとタペットの隙間がガバガバに拡がって、タペットクリアランスが少なくなっていないか確認します。
タペットクリアランスの確認と調整
4サイクルエンジンは2サイクルエンジンと違い、シリンダーヘッドにタペットが設けられ、タペットの開閉により、吸排気を行います。
タペットのクリアランスは、エンジンを回しているうちにだんだん少なくなってきて、クリアランスが規定値を超えて少なくなると、エンジンは本来のパワーを出せなくなるので、定期的にタペットクリアランスの確認と調整を行う必要があるのです。
そこで今回、久しぶりにタペットクリアランスの確認を行うことにしました。
エンジン自体は使用後に清掃を行っているので、タペットカバーも光輝いていますが、タペットカバーを外すと…
ご覧のとおり、長らく放置していたので中は錆だらけです。
ロッカーアームとタペットの隙間を確認してみると、そんなに開いてません。
さすがNASAの燃料は違いますねー。
他の燃料を使っていた時は20フライトほどでロッカーアームとタペットの隙間が開いてしまい、その都度調整ネジを絞め込んでいましたが、NASAの燃料は優秀、前回調整してから50フライトほどですが、まだ限度値は超えていません。
燃料によってエンジンの劣化度合が違うことを、あらためて感じました。
ま、しかしせっかくカバーを開けたのでクリアランスを0に調整しました。
スローアクロで56エンジン使うなら、ロッカーアームとタペットのクリアランスは0がおすすめです。
ニードルをシビアにさわるよりパワーアップ効果バツグン!タペット調整に自信がある人は是非チャレンジしてみてください。
FZ63Sのタペット調整と機体取付け角度の調整
続いて70クラスのアクロバット機に搭載してるFZ63Sの調整です。
このエンジンは搭載されていた機体ともども2ヶ月間山中に風雨にさらされながら放置されていたのですが、実は発見回収してから現在まで一度も中を確認していませんでした。
見るのが怖かったというのが大きな理由ですが、今回いよいよ意を決してヘッドカバーを開けました。
タペットクリアランスの確認と調整
2ヶ月間も風雨にさらされ、湿気によるひどい錆を覚悟していたのですが、シリンダーヘッドカバーを開けて確認してみると、あっけないほど綺麗なままです。
タペットクリアランスも限度値を超えてはいませんでしたが、シリンダーヘッドカバーを開けたついでに、クリアランス0に調整しときました。
そして、グロープラグも新品に交換。プラグが劣化してくると、FZ63Sは高回転で失火することがあるので、消耗品と考えて早めに交換することをオススメします。
機体への取付け角度(ダウンスラスト)の調整
エンジンの点検整備は完了しましたが、久しぶりに機体のエンジンカウルも外したついでに、以前からやりたかったダウンスラストの調整もしました。
機体の重心位置の影響もありますが、ダウンスラストが少ないと、機体が浮きやすく、着陸時などはエンジンパワーを上げて吊り上げながら降下させることが難しく、エンジンパワーを絞りながら、いつ失速降下するのか分からない不安定な挙動を解消したかったのです。
ダウンスラストをつけるために、エンジンマウント上側にスペーサーを入れてエンジンを若干下向きにして、浮き上がりを押さえるのが狙いです。
2st40クラスくらいの機体なら、適当なワッシャーをエンジンマウントにかますだけでしたが、さすがに4st70クラスはカーボンシート2枚重ねを使いエンジンマウント全体で力を受けるようにします。
スラスト角度で見ると0.5度ほどの変化ですが、いきなり多くのダウンスラストをつけるのも、操作性に不安が残るので、少しずつダウンスラストをつけていき、操作性を試してみようと思います。
自分で整備すればフライトの不安も減る
このように自分でしっかりと整備しておくと、精神的な不安要素が減るので、操作に対する自信もつきますし、機体を信じる事も出来て、恐怖心からくるスランプの対抗策となるのでは?と考えています。
いつでも同じコンディションで飛ばせるほどラジコン飛行機は簡単なものではなく、季節でも変化するし、1日のうちでも時間によって刻々とコンディションは変化します。
そんなシビアな状況で、ギリギリのフライトに神経をすり減らすことにしか楽しみが見出せなくなってしまったのなら、自らの思いを託す機体やエンジンは、いつも最大のポテンシャルが発揮出来るよう、自分の責任で手入れを行う必要があるでしょう。
タペットクリアランスについて
ラジコン用の4サイクルエンジンのタペットクリアランスについて、そんなの知らないまま使っている人も多いと思います。
事実、遊覧飛行を楽しむだけなら、シビアにタペットクリアランスを調整する必要もありません。
しかし、重量2kg以上の機体を、ホバリングさせ、そこから上空に引き上げるには、単純に考えて、推力2kg以上を余裕で発生させるエンジンパワーが必要で、特に56クラスの4サイクルエンジンでは、タペットクリアランスが適正でなければ、2kgの機体は引き上げられません。
よって、常にタペットクリアランスを確認して調整する必要がありますが、調整はメーカー指定の数値の中にあれば良い、とは言い切れず、最高出力はタペットクリアランス0に調整しないと発生しないので、私は調整時は必ず0にしています。
調整時は、ロッカーアームを指で持ち、上下に動かして、カタカタならない、しかしタペットを押し込んでいない、という調整を行うので、私には自動車のエンジン調整に使うようなシックネスゲージは不要です。
ラジコン用4サイクルエンジンのタペットクリアランスは少ない方がパワーが出るのです。