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LiPoバッテリーのバランス充電は必要か

空物ラジコン

私は今まで相当数のLiPoバッテリーを使ってきましたが、バランス充電したことがありません。

初めて使用したリポは、もう10数年前ですが、FOXが扱うコカムのハイディスチャージ(7C)3S1500maを3並列したものでした。(合計4500ma、まだホーネットやコブラなどの名称が無い頃です)

LiPoバッテリーが世の中に認知される前

私がLiPoバッテリーに出会ったのは、世の中がまだラジコンカーですらブラシモーターにニッケル水素バッテリーが当たり前の頃です。

25クラス2サイクルエンジンで飛ぶラジコン飛行機が、電動モーターで飛ぶ事が驚かれた時代で、RC飛行機専門ショップでさえ、私がどんなに「これからは電動ラジコン飛行機の時代が来る」と力説しても「そんなことが出来るわけない」とあっさり言われました。

それ程に、LiPoバッテリーも一般フライヤーにはほとんど認知されておらず、後にLiPoバッテリーのラジコンへの利用に貢献する人達が日々実験を繰り返していた頃でした。

変わり者と呼ばれた師匠との出会い

LiPoバッテリーやブラシレスモーターに関する情報が国内にはほとんどない時期に、私が独自に勉強し試行錯誤して大金を投入してLiPoバッテリーの知識を蓄積し、エンジン機と遜色ない電動ラジコン飛行機を飛ばしていたわけではありません。

私は偶然にも、大型電動DF機と多並列大容量LiPoバッテリーの実践投入を早くから手がけておられた今井さんとご縁があり、秘密基地とも呼べる氏のご自宅まで押しかけ、LiPoバッテリーの基本から安全確実な運用方法、クラス別の最適なパワーユニットまでキッチリ丁寧に教えていただいたのです。

今井さんは、国内で誰もやっていないことに取り組み、周りからは変わり者と見られていましたが、32SXというグローエンジンを積んでいたホットリンボーを電動化して、今井さんと笠岡ふれあい空港に持ち込んだ時、元気に飛んでいるホットリンボーを見ていた他の操縦者が「あのエンジン機、すごく静かだな」と言ったのを聞いて2人で目を見合わせニヤリッとした事は今でも忘れません。

私が何故バランス充電をしないのか?

前置きが長くなりましたが、私が、なぜLiPoバッテリーのバランス充電をしないのか、答えは明確です。

バランス充電をする必要がない品質の安定したLiPoバッテリーを、余裕を持たせて使用しているからです。

これはLiPoバッテリーが出始めた頃から安全に使う為の大前提であり、真剣に研究、実験使用してきた人達は、私と同じようにLiPoバッテリーのバランス充電の必要性を、現在もほとんど感じていないと思います。

何故バランス充電が必要というのか?

LiPoバッテリーは1セルあたり4.2Vが満充電電圧です。3セルだと12.6Vになります。

LiPoバッテリーは1セルあたり4.2Vを超える電圧になると性能が低下していきます。

高品質なLiPoバッテリーは使用方法さえ間違わなければ100回以上使用しても各セルにバラつきが出にくく、スワローチャージャーなど最適な充電器で12.6Vまで充電すれば問題ありません。

しかし、低品質なリポバッテリー3Sパックで1セルだけ4Vまでしか電圧が上がらないハズレだと、他の2セルは4.3Vまで上昇してしまい、このような状態で一括充電を繰り返していくうちにバッテリーパック自体の性能が低下するので、各セル毎に充電して満充電電圧を揃えましょう、というのがバランス充電が必要とされる理由です。

バッテリーが壊れてるからバランス充電が必要になる

バランス充電の必要性は理解出来たと思いますが、「なるほど」と簡単に納得しないで下さい。

LiPoバッテリーメーカーは全セル一括充電を繰り返しても問題ない品質のバッテリーパックを提供することが当然であり、他のセルと同じように電圧が上がらないセルは使い物にならない不良セルであり、そんなセルが混ざっているバッテリーパックはすでに使い物にならないのです。

それをバランス充電で克服できるかのような誤解を初心者に与えていることはとても残念です。

低品質なバッテリーメーカーによってバランス充電は広まった

「テスト目的で使用して下さい、責任は持ちません」という口上ばかりを述べ、挙句に不良セルまでも平気で市場に投入してくる3流バッテリーメーカーには唖然とさせられます。

このことを裏付けるかのように、我々が経験から低品質だと判断していたLiPoバッテリーのブランドから、バランス充電という手法が広まりました。

私は低品質のLiPoバッテリーから出るバランス端子、それに接続するバランサーを初めて見たとき「低品質のLiPoバッテリーを作って、さらに無駄なものを買わせるのか?!」とビックリしました。

「このLiPoバッテリーパックは各セルの品質がバラバラなので、一括充電していると20回くらい充放電したら性能が低下する」という意味だと理解できた賢明なユーザーはどれほどいたのでしょうか。

追従するかのように他のメーカーのバッテリーにもバランス端子が取り付けられ、バランサーや専用コネクターが発売されました。

私は冷ややかな気持ちでそんな状況を眺めておりましたが、時は丁度EPP製小型電動ラジコン飛行機がブレイクした頃、どこのショップも「LiPoバッテリーにはバランス充電が必要です」と販売促進したおかげで、初心者を巻き込んで「LiPoバッテリーを安全に使う為にバランス充電をしなければいけない」「バランス端子のついていないLiPoバッテリーは充電するとき危険だ」という風潮になってしまいました。

高品質LiPoバッテリーもバランス充電コネクタを付けるしかなかった

こうなってしまうと高品質でバランス充電の必要がない為、バランス端子を取付けなかったコカムやサンダーパワーも、重たくなるだけで無意味なバランス充電用の端子を付けざるを得なくなりました。

まずコカムが「欲しけりゃどうぞ」とバランス充電端子の有無を選択できる形でラインナップを揃え、最後まで抵抗していたサンダーパワーもついにバランス充電端子をつけてしまいました。

私はガッカリしましたが、バランス充電の必要がないことがステータスだったバッテリーメーカーも、バランス充電端子を付けるだけでコネクターセットやバランサー、同じ性能だけどバランス充電できる充電器などが余計に売れるとなれば、これも時代の流れとあきらめるしかないのでしょう。

仕方がないので私はサンダーパワーのバッテリーから3グラムもあるバランス端子を切断して使用しております。

なぜバランス充電不要と言い切れるのか

私がここまでバランス充電不要と言い切るのは、7C放電しか出来ない性能の頃からLiPoバッテリーを使い続け、十分に経験と知識のあるベテランに直接指導を受け、自身も1年間で2000回以上、多くのメーカーのLiPoバッテリーを使用してフライトさせた経験があるからです。

ここまで低品質なLiPoバッテリーを使うなと書きましたが、あと一つ余裕を持って使用する事の説明が残っています。長くなってお疲れでしょうが、今しばらくお付き合い願います。

余裕をもって使うのは難しい事ではない

高品質なLiPoバッテリーを使っていても、間違った使い方をしていると寿命を短くしてしまうでしょう。

  • LiPoバッテリーの放電能力の確認と、使用するパワーユニットの最大電流の確認
  • アンプのカット電圧の確認と設定、そして適切な充電器を使用すること。

これだけを絶対厳守していれば、LiPoバッテリーは難しい電池、あるいは危険な電池ではありませんし、寿命をまっとうさせる事ができるでしょう。

逆に言えば上記のいずれかを疎かにすると、LiPoバッテリーを安全運用することは難しいのです。

LiPoバッテリーの放電能力は20Cなどで表記されるのはご存知でしょう。

しかしこの表記には統一規格がありません。

安価で低品質なリポバッテリーほど瞬間最大放電能力を表し、高価で高品質なLiPoバッテリーほど連続放電可能な能力を提示する傾向にあります。

よってコカムやサンダーパワーは表記されている能力の8割ほどをユニットの最大電流に設定しておけば問題ありませんでした。

しかし低品質のLiPoバッテリーは表示能力の5割程度に最大電流を設定しておかないと、寿命が著しく短くなります。

ハズレのバッテリーパックだと20回ほどの充放電で明らかにパワーが落ち、飛行可能時間も短くなります。

正しい知識を持てば安全に使える

最大消費電流の計測は必須

LiPoバッテリーの品質がどうこう言う以前に、使用するパワーユニットの最大電流を計測しない(知らない)人が結構多い事にビックリします。

「50回も使ってないのに膨れてきた」と言う人に「電流どれくらい?」と聞いてもハッキリ知らないのです。

最近は機体とセットでLiPoバッテリー、アンプ、モーターが売られていますので、特に意識せず大丈夫だと決め込んでいるのでしょう。

しかしパワーユニットには個体差も多々あります。

余裕のないギリギリのセットかもしれません。

絶対に最大電流は把握しておかないとダメです。

計測しない人は本人と他人の為にLiPoバッテリーを使ってはいけません。

アンプの適正なカット電圧

次にアンプのカット電圧ですが、これは多くのアンプが1セルあたり3V以下に初期設定されています。

3セルなら9Vでカットされる計算です。

しかしこれでは余裕がありません。

LiPoバッテリーを1セル当り2.5V以下に放電してはいけない、と書かれているのを見ますが、私の経験では3V以下に放電するのも寿命に影響します。

またアンプは単セルごとに電圧を検出するわけではなく、3セル合計の電圧が9ボルトになったときカットするので、1セルだけ電圧降下しやすいパックだと、1セル目3.1V、2セル目3.1V、3セル目2.8Vという状況でカットされる可能性があります。

バランス充電をしても満充電の電圧を揃える事は出来ても、放電時の電圧をコントロールすることは出来ません。

以上のような事から、私が使用するフェニックス10というアンプのカット電圧は9.4Vに設定しています。

3セルなので9.3Vにしても良さそうですが、この設定で10分以上フライトできるので余裕を持たせてそうしています。

しかしアンプ単体で0.1V単位でカット電圧を設定できるものは少ないと思われ、別売の設定機器を用意する必要があります。

あえてアンプだけでは簡単な設定しか出来ないようにしているのですが、詳細に設定しなければLiPoバッテリーは使えませんので、用意するしかありません。

ただ私が使っているアンプ、フェニックス10ならパソコンと接続して簡単に設定できるコードが安価で販売されています。

フェニックス10の性能を100%発揮させる為には必ず購入する必要があります。

容量で言うなら700maのバッテリーパックだと最低でも100maは残る、つまり充電すると600ma充電する程度で放電を停止しないとダメです。

700maキッチリ使い果たすような設定ではどんなに高品質なLiPoバッテリーでも寿命が短くなります。

このあたりの事は、設定と実際の充電量を繰り返し確認しながら、ご自身で余裕のある使い方を把握していけば良いのですが、周囲に経験者がおらず、手探りでLiPoバッテリーを使わざるを得ない人は、必ずアンプのカット電圧を高めに設定して、ご自身でデーターを蓄積されることをおススメいたします。

LiPoバッテリーは誰も一切保障してはくれない商品です。使う人に全ての責任があることを十分理解して、余裕を持って安全に運用して下さい。