以前からエンジン不調だった70クラスのアクロバット機。エンジン不調なのは分かっていながら、原因はエンジン調整不良か外気温の高さによるオーバーヒートかと思い、そのまま飛ばしていたのですが、どうやってもエンジン不調は治まらず、ついにエンジンメーカーに修理に出しました。
電装品やバッテリーは性能低下が分かりにくい
エンジンは体感的にパワー低下が分かるので、無理に使えるわけでもなく、このようにメンテナンスは行いますが、電装品は見た目に不具合が分からず、機能が低下していることも分かりにくく、ついつい確認を疎かにしてしまいがちです。
特に受信機のバッテリーは、各サーボの動力源ともなっており、本来は一番大切なパーツにも関わらず、まだ大丈夫だろうという甘い考えが悲劇を呼ぶことになります。
今回私は大事な機体を墜落で失いましたが、そこに至るまでにまでは様々な原因や前兆がありましたので、皆さんは私と同じ過ちを犯さないよう、私のミスをご参考にしていただければ幸いです。
墜落の第1の前兆
受信機バッテリーは家での充電前には放電器で放電してから充電します。
よって通常なら700maのバッテリーで600ma以上入ります。
が、今回は450maで充電がストップしていました。
「ついにバッテリーがへたってきたか」と思いましたが、その時は追充電を数回繰り返し合計600maほど充電しつつも「このバッテリーはもうダメだ。飛行会の時にフライト前にショップでバッテリーを買って交換しよう」と決めました。
墜落の第2の前兆
飛行会当日、まだ飛行場のオーナーが来ておらず、ショップも開いていなかったのですが、事務局長の許可で久しぶりに70クラスのアクロバット機を飛ばしました。
バッテリーが怪しいのは分かっていましたが、「450maは充電出来ているし追充電もした、1回飛ばすだけなら大丈夫だろ」と、それほど気にもせず離陸、5分ほどで着陸させました。
飛ばしている時、スローロールで背面に向いたあたりで機体がピクっとなりましたが、「あのあたりは気流か電波状態が悪いな」としか思いませんでした。
で、飛行機に併設されているショップがオープンしたので受信器用6Vバッテリーパックを購入しました。
前夜まではバッテリーパックを購入してすぐに交換するつもり満々だったのですが、主翼やエンジンカウルまで外さないとバッテリーパックが交換できず、また当日は久々に無風の絶好のコンディションだったので、交換作業で時間を潰すのがもったいなく感じて「450ma充電出来るんだから毎回飛ばす前に充電したらイケるだろう」とそのままいくことにしました。
墜落の第3の前兆
1回目のフライト後バッテリーを再充電して2回目のフライト。1回目のフライト後にエンジンのレギュレーターを1回転あけてドンピシャになり、エンジンレスポンスも抜群、バッテリーパックの心配などすっかり忘れ、高速低空飛行のシビれる排気音に陶酔しながら、しかしスローロールでまたしても機体がピクつくことを不審に感じながらも、上空にあげて垂直降下から3舵フルに当ててスピンに入れた途端!
そしてついに最終通告
全てのサーボが突然動かなくなり、何も操作できず、完全に機体はノーコンになり、スピンしたまま飛行場から外れた深い谷へゆっくりと吸い込まれていきました。
1機12万円以上と自信と信頼を失いました。
頭の上でスピンさせるのが怖いこともあり、滑走路から少々離れたところでやっていた為、険しい斜面を1段目ギリギリまで降りましたが、機体を発見することは出来ず、それ以上危険を冒しても斜面滑落で怪我をしたり、斜面から上がれなくなって他の人に迷惑をかけては、2度とラジコン飛行機を飛ばせないと判断し、泣く泣く機体の回収をあきらめました。
完全になめていました…
2日前の充電で、放電後の700maバッテリーが450maしか入らない時点で捨てるべきでしたし、機体を組み上げて初めて飛ばすときには、そんなバッテリーパックは絶対に使いません。
信頼性の高い受信機149DPを使った機体が、飛行中に勝手にピクつくことだけでもNGです。正しい判断が出来る人なら、それが異常事態であることにすぐ気づいたことでしょう。
私はEPP製の小型電動ラジコン飛行機につけている、安いFM受信器と同じように考えてしまったのです。
バッテリーチェッカーすら使っていなかった
私はFUTABAのバッテリーチェッカーも持っています。しかし最近はそれを放電器として使うばかりで、飛行前に受信器用バッテリーのチェックなんてしていませんでした。
「いつも3フライトは充電しなくても大丈夫。あと1回いける」といったノリでした。
それに高性能受信器149DPは受信器用バッテリー電圧が低くなると、エンコンサーボだけ止めて、操縦者に受信器用バッテリー電圧が低下していることを教えてくれる機能があるから安心、と過信もしていました。
しかし、不良バッテリーが一気に電圧降下すれば、そんな機能なんて意味がなかったのです。
あくまで元気なバッテリーが少しずつ電圧低下する場合だけ有効に働く機能でした。
これら上記の事柄を1つでも慎重に受け止め、ラジコン飛行機がノーコンになったら、自分も他人も非常に危険であることをしっかり認識していれば、買ったバッテリーパックを即座に交換していたことでしょう。
他の人達は「ここじゃなく、広い飛行場なら回収できたのに残念だったな」「ノーコンなら仕方ない」と慰めてくれましたが、私は全てを失った事よりも、一歩間違えると凶器にもなるエンジン搭載ラジコン飛行機をノーコンにした馬鹿な自分自身がものすごくショックでした。
たまたま事故にならなかっただけ
たまたま山の上を垂直降下中だったからこそ誰にも激突しなかっただけで、水平飛行中や近隣に一般人や建物、道路のある飛行場や川原だったら、と考えるとゾッとします。
よくもまあ機体喪失だけで済んでくれた、とさえ思います。
日頃は他人に偉そうに「そんな事をしていたら危ない」とか言っているくせに、私自身がこんなことをする人間だったのです。
自分が熱中する趣味を自分自身で潰そうとしたのです。
不注意な事をした無念が今も胸に残ります。今回は本当に運が良かっただけです。
予測できない機械的故障、あるいは電波妨害などによるノーコンなら言い訳も出来ますが、私の場合は数多くの前兆を伴う受信器用バッテリーの不良が原因のノーコンです。
初心も基本も忘れる愚かさ
最近は、ラジコン飛行機をホバリングでこかしても、墜落やロストはなく、初心も忘れ基本さえも忘れ、自身に不釣合いなラジコン飛行機の飛行テクニックばかりを追いかけていました。
これからも大勢の仲間と楽しめるラジコン飛行機という趣味を続けていくため、今一度基本に立ち返り、今回のことを忘れることなく、安全を最優先に取り組んでいきたいと思います。
機体ごと全て失って分かったこと
私は日頃から墜落してキットを再度購入するリスクは覚悟していましたし、いつでも次回の飛行会に間に合うよう購入するための用意はありました。
しかし、まさかラジコン飛行機1機まるまる失うとは夢にも思っていませんでしたので、いきなりキットとメカ一式、延長コードや燃料タンク、リンケージパーツなど全てを1から用意することは平凡なサラリーマンには大変厳しい事です。
エンジン一つにしても、それまで持っていた2サイクルエンジンを処分して購入したり、サーボにしても数個売って新たにハイグレードのものを1個購入したりと、数年に及ぶ期間で少しずつ入れ替えながら手に入れたものでした。それを一瞬で失ったです。
何か使えるパーツはないか?と家の中を探してみても、入門機には使えても、アクロバット機に使えるパーツなんて残っているワケもありません。
しかし今さら、お金が無いという理由では安価な機体を飛ばす気にもなれず、そう言ってるうちに時間は過ぎ、結局ラジコン飛行機をやめてしまう。
そんな状況に簡単に陥るのだと強く実感しました。
無理しなければ買えない機体は飛ばすな
常々ホクセイモデルの池田さんは「アナタが同じ機体を3回買えるなら、その機体に挑戦したらいい」「高価な機体を持つ人ほど1度の墜落でラジコン飛行機をやめてしまう」とアドバイスしてくれます。
私は「機体くらいなら買える、大丈夫。まさかメカごと壊れる事なんてないし」と内心思っていましたが、実際に自分が全てを失うと池田さんのおっしゃる事がしみじみと伝わります。
私はロストですが、地面に激突してエンジン、サーボ、受信器なども同時に壊してしまえば同じ事でしょう。
まさにその通りの事が私に起こり、占領していた機体が無くなり広く感じる部屋にボーっといると、「無理してラジコンするより家族と一緒に楽しめる他の趣味を探してもいいかなー」という気分にさえなりました。
幸い私には「頑張って早く復活しろよ!」と、心から応援してくれる仲間たちと、中古で売りに出していたYSFZ63Sがあり、それを引っ込めメーカーにオーバーホールに出し、パソコンを買い取ってもらえたので、なんとか一命は取りとめました。
しかし再び機体を失えば文字通り絶体絶命。今回の事を教訓にリスクを少しでも軽減出来るよう取り組むつもりではありますが、何が起きるか予測出来ないのがラジコン飛行機です。
ラジコン飛行機をやめる日は、実はすぐそこにある
大きな墜落もないうちは仲間同士で「これからも当分はアクロ機を飛ばしてスケール機は65歳になってから楽しもう」「まだ20-30年あるしユックリいきましょう」と冗談まじりで話しておりましたが、とんでもない!私がラジコン飛行機をやめる日は、実はすぐそこにあるのです。
皆さんはいかがでしょうか?
同じメカと同じ機体を3機分買えるお金の用意はありますか?
40クラスのトレーナー機からステップアップしたら、一気に金のかかり具合が変わってくる70クラスや90クラスのスケールアクロ機、ましてやガソリン機にステップアップを検討されるなら、このことを是非ご参考にしていただければ、きっとラジコン飛行機をいつまでも楽しんでもらえると思います。
そこそこに上達してから安価な入門用ラジコン飛行機に戻れる人はほとんどいません。
舵を打ち間違えてラジコン飛行機を落とす事などあり得ないベテランフライヤーにも、その瞬間はある日突然やってくるのです。