今でこそ電動ダクテッドファンの推力も向上し、いろんな機体を簡単に飛ばすことが出来るようになりました。
電動ダクテッドファンを複数積んだスケール旅客機で有名な神戸の今井さんも益々巨大なダクテッドファン機を作られています。
しかし、電動ダクテッドファンが市場に出始めた当時は、推力も十分ではなく、寒冷期などでパワーソースのコンディションが悪ければ、水平飛行がやっと、風などの外因で体勢が崩れると手元に戻すことも難しい、という気難しいものでした。
今回はそんなダクテッドファンが出回りだした頃の苦労話を皆さんにお届けいたします。
電動ダクテッドファン機を扱うコツも紹介していますが、今でも通用するはずなので、参考にしてもらえると思います。
ダクテッドファン仕様スケールジェット機T4が登場
はじめにT-4とは、航空自衛隊が使用している中等練習機で、プロペラ機による操縦訓練を終えたパイロットが、続いて行う中等操縦練習のために製作された亜音速ジェット機です。
T-4はエンジンを含めた日本の純国産ジェット機で、航空自衛隊に所属するアクロバット飛行チーム、ブルーインパルスが戦技研究仕様機としても使っています。
今回ご紹介するのは、そのT-4を板状にプロフィール化したスチレン製の小型電動ダクテッドファン飛行機です。
パワーソースは当時安価に手に入れることが出来た庶民向けダクトファンのEDF55、ホクセイモデルのブラシレス青モーター、lipoバッテリーは、ホーネット910の標準仕様です。
機体重量は260gでダクテッドファンの推力は180gですが無茶なことをしなければ十分楽しめ、スチレンをきれいにカットしてあるキットをサクサクと作れば、誰でも簡単に軽量に仕上げることが出来ます。
機体重量が軽いおかげで着陸も簡単、壊れにくくて、とてもお手軽に遊べるキットでした。
推力維持のためにLiPoバッテリーの保温対策が必要
私は機体の裏面に貼り付けるべきメカを、わざわざ埋め込んでいました。
少しでも空気抵抗を抑えて、少ない推力を有効に使いたかったのですが、飛行スピードが遅かったこともあり、期待する効果はありませんでした。
まさしく気分の問題です。
ただし、冬場、むき出しで外気にモロに当たるlipoバッテリーは防寒保温対策が必要です。
私は冷気を防ぐために保温シートでLiPoバッテリーを包んで保温対策していました。
飛行前にも、出来るだけlipoバッテリーを20度以上に温めておかないと、ダクテッドファン機など、初速がつきにくい機体は、lipoバッテリーが冷えていてモーターパワーが十分に出なくて高度を取りにくく危険です。
じつは衝動買いだった
じつはこのT-4は衝動買いでして、笠岡飛行場でホクセイモデルの池田さんに会ったときにデモ飛行を見せてもらい、あまりにお気楽に簡単そうに飛んでいるのにビックリしたのです。
当時はダクテッドファン機はとてもじゃないけど簡単には飛ばないというのが定説だったにもかかわらず、このキットは安くて手軽なパワーユニットで確かに悠々と飛んでいます。
池田さんも「ね、意外と簡単にと飛ぶでしょ~」と。ニヤリッ
簡単に飛ばない飛行機を、なんでも簡単そうにフライトさせるのがキットメーカーの池田さんの仕事、だということは十分理解しているのですが、それでも驚いたほどに飛んでいたのです。
さらに続く池田さんの「これでみんなでパイロンレースでもしたら面白いで~」「どないですかぁ」と言いながら、どこからか取り出したデジタル計量器に載せ「ほーらすごく軽いでしょ~」ときたところで、ついに私がたまらず、そこらにいた連中巻き込んで4機お買いあげとなったのでした。
アクロ屋がダクテッドファン機を買うなんて、今考えると何を血迷ったのかと自分でも思いますが、板状の機体とはいえ、やっぱりダクテッドファンを積んだジェット機はかっこ良かったですし、ラジコン飛行機を飛ばす者には無視できない存在だったのです。
パイロンレース開催を誓うも
「池田さん今度もってきますから一緒にパイロンレースしましょうね」と約束したのですが、しかし、それっきり池田さんはT-4を我々の前でフライトさせることもなく、車に積んでくることもありませんでした。
というだけでも火だるまで残念な話ですが、なまじっか次はパイロンレースだ!と意気込んだ他の連中のなかには、高価なダクテッドファンユニットであるバーサファン+なんかスゴいブラシレスモーターまで搭載し、私の機体の倍近い推力をたたき出してる強者も現われて。。。
「おい!パイロンレースはいつ開催されるのだ?みんなでパイロンレースをすると言うから、俺らも巻き添えくらったのに、そして勝つために湯水のように金を使って改造したけど、この始末どうつけてくれるのだ?」
と、詰め寄られて困ったもの、今ではほろ苦い思い出となっています。
ダクテッドファンだけでなくラジコン飛行機もどんどん進化してきましたが、いつの時代も愉快な仲間たちと工夫しながら楽しめる趣味であり続けてくれることを願って止みません。